エンジニアが領域を越えて働くことから学べること

https://qiita.com/advent-calendar/2019/goodpatch 17日目
始めに
Goodpatchでは職種にかかわらず、プロダクト開発の上流から関わる働き方をしています。会社のバリューにもGo Beyondというものがあり、それぞれの専門家が領域を超えて共創をすることで一人では出せないような新しい価値を創出できることに会社としても価値を感じています。
今回はその中でもエンジニアの私がユーザーヒアリングを通して現場のデザイナーとペアデザインをした際の学びと感じたことを専門性の領域を超えて働くことという文脈で述べようと思います。
ペアデザイン
一般的にペアデザインとはデザイナーとデザイナーがペアで作業やクリエイティブをすることでより優れたUX設計ができるという文脈で語られることが多いですが、Goodpatchでは異職種間(エンジニアとデザイナー、CSとデザイナーなど)で共創することもペアデザインと定義しています。(今回はペアデザインを後者の文脈で使用します。)
今回のペアデザインの内容
今回はユーザーヒアリングを社内、社外の2パターンで行いました。自分が今回行ったこととしては、

- ユーザーヒアリングを通してどのような観点でのインプットが欲しいのかを整理する
- その観点をもとにヒアリングスクリプトの骨子を作る
- ユーザーヒアリングの実施
- 実施した後のKPTをもとにヒアリングの骨子とやり方のアップデート
- 実施したヒアリングの観点をツリー状に洗い出し共有
- そこからグルーピングをし、ヒアリング内容の構造化
- 必要なアウトプットの方にまとめ、再度共有
まだすべての工程は終了していませんが、上記の流れでペアデザインをしていました。
余談ですが、ペアデザインをしているときは、whimsicalというツールを使用して議論の可視化、情報の蓄積を行っていました。
学び/感じたこと
視座が上がる
エンジニアは要件や要求に対して実際のプロダクトに実装していくところに基本的な専門家としての責任があると思っています。そのため「どのように実現するか、要求や要件を満たすか」を考えると思います。またそれが複雑な要件や難易度の高い要求ならばなおさらその思考に時間と力を割くと思います。それがたいへんでもあり、楽しい部分でもあるのですが、それを続けていくと自然と視点が実現可能性や実現方法によってしまうように感じることがあるのです。
目的(なぜそれを作るのか)ではなく方法(どうやって作るのか)に思考が偏ると手段の目的化が起こり、結果として視座が低い状態が生まれてしまうと考えています。
今回ユーザーヒアリングを複数回経験していくうちに「ユーザーが現状どこに課題を感じているのか」「ユーザーがどのような状態になりたいのか」のインサイトを見ることができました。ヒアリングを通してユーザー視点の解像度が上がることで、自然と視座がプロダクトレベルまで引き上がっていくのを感じました。視座が上がるとプロダクトを目的の主軸として思考が回るため、なぜそれを作るのか?、なぜその施策を行うべきなのか?という問いが議論の中で自然と出てくるようになり、その結果コミュニケーションの中にペルソナやユーザーという言葉が飛び交うようになります。またこのような議論だけでなく、このような目的思考は実際に開発をする際の設計や実装のフェーズでも効果があるものです。ユーザーにどのような価値を提供するのかベースで思考がめぐるため、設計の最適化やコードの最適化(逆に早すぎる最適化の防止)などにも寄与できるものだと考えています。
これらのことをまとめてみると、視座が上がるということはつまり、俯瞰と詳細を行き来できる状態になることであり、局所最適ではなく全体最適を目的としてプロダクトやチームに働きかけることができるようになります。そうなるとプロダクトの枝葉の話だけでなく、根幹のの部分にも思考を巡らすことができ、その結果チームやプロダクトの向かう方向性の解像度が向上し、プロダクトの品質や開発の生産性も向上するのです。
開発者から「ユーザー」というものが見える
開発者として開発業務だけとずっと接していると詳細設計や実装のときにサービスを実際に利用してくれるユーザーのことにボヤがかかったように見えづらくなる時があります。そのような状態は無意識にユーザーのことを意図せず設計をしてしまったり自分の役割の中に閉じこもってしまったりしてしまいがちになると思います。
しかし、ユーザーヒアリングを通して実際にユーザーに会うことで、利用者の人間と対面でコミュニケーションを取ることができ、自分たちが関わっているプロダクトのどこに価値や魅力を感じてくれているのか、逆にどこを課題に感じてくれているのかをより肌で感じ取ることができます。それにより、開発のときにより「ユーザー」が見える状態を作ることができるので、ユーザーが本当に求めている本質的な価値に言及してものづくりをすることができます。
職種間でコミュニケーション量が増える
ペアデザインを通してエンジニア以外の職種の人とコミュニケーションを取る機会や頻度が増えるので自然とチームメンバーとのコミュニケーション量が増加します。コミュニケーション量が増加することにより意思決定のスピードが向上し、チーム内に流通する情報量が増えます。プロダクト開発における学びを最大化することができたり、プロダクト開発の生産性を向上させることができます。
実際にユーザーヒアリングを通してデザイナーと議論を重ねていくうちに、自分がインプットすべき情報とアウトプットすべきステークホルダーが明確になり、結果としてCSの方や他のエンジニアの方と様々な角度や観点でコミュニケーションを取るようになりました。結果として新しい施策や新しい観点をプロダクトに取り入れ用とする動きを以前より活発に行うことがチームとしてしやすくなりました。
当事者意識
また上記のことを感じ取ることができたり学んだりすることができたのは、マインドセットのレイヤーで「当事者意識」がより高く醸成できたからかなと思っています。プロダクト開発をしているのは私だし、いいプロダクトにするために私がやらなければならないことはたくさんあります。当事者意識が高まるといいプロダクトにするために自分が行動できることを発見できる幅が大きく広がります。ユーザー目線とプロダクトの軸で他のメンバーとコミュニケーションを取ることで、他のメンバーにもマインドセットを伝搬させることができるメリットがあると思います。その結果として上記で述べたようなことを実践することができているのだと思います。
まとめ
以上となりますが、ユーザーがいないとプロダクトは成り立ちません。プロダクト開発にとって「ユーザー目線」は不確実性の高いVUCA時代ではとても重要な観点です。チームでプロダクト開発をしている中でエンジニアだからとかデザイナーだからとかで自分の領域を狭めることは良いプロダクトを作るという目的に立ったときに不利益を生み出してしまいます。
そのため 今のプロダクト開発では、高い専門性を持ったメンバー同士が領域を超えて共創することでチームとしてもプロダクトとしても偉大なものができると信じていますし、これからもそのことを世の中に証明していけたらと思っています。
ありがとうございました。